ベトナム語の数詞”3”には、「何かが3つある」などの3という概念を表す以外の用法があります。
(1)Ba cái thứ đó ai mà thèm dùng.
3/CL/もの/その/誰/<関係詞>/欲する/使う
日本語訳:そんなもの、誰が使おうとするのか。
(CL=類別詞。ここでのcáiを類別詞とするかは議論が分かれますが、他に書きようもないのでこれで。)
(1)において、baを他の数詞(hai:2など)に置き換えることができません。
ここでのbaは3という意味ではなく、あえて日本語にするなら「いくつかの」くらいの意味で、加えてマイナスのニュアンスが含まれているんだとか。
(1)は母語話者(ベトナム南部出身)に作ってもらった文なので、小説などの中に似たような例がないかなーと思ったら、ありました。
以下は、「Tôi thấy hoa vàng trên cỏ xanh(草原に黄色い花を見つける)」という小説にある文です。
(2)Ba thứ thuốc vớ–vẩn đó thì ăn–thua gì.
3/種類/薬/意味のない/その/TOP/勝ち取る/何
日本語訳:そんな意味のない薬なんか何にもならない。
(TOP=主題マーカー)
薬が何の効用もないという意味ですね。
最初にこの文を見た時、「何で3…?」と不思議に思っていたのが解決しました!
(2)も(1)同様、3が「複数で、マイナスの意味」と考えるとスッキリします。
ある特定の数詞がその数の概念そのものではなく、大雑把な概数を示す例は日本語にもあります。
「たくさん」なら、八百万(やおよろず)あたりですね。
「いくつか」なら、五目でしょうか。いや、五目はたくさんの方になるのかなぁ。
でも、どっちにしろマイナスの意味はないですよね。
ちなみにbaという言葉、南部方言だと「お父さん」の意味もあります。
ある意味baだけど3じゃない。
ちなみに「Tôi thấy hoa vàng trên cỏ xanh(草原に黄色い花を見つける)」は映画化されてて、いろんなところで上映中。
もちろん日本語字幕付き、感動するから是非見てね。